
こんにちは、吉坊です!
今回は、手染め屋吉兵衛と吉坊の誇りとも言える技法、「志毛引き染め」についてお話ししたいと思います。みなさん、「志毛引き染め」ってご存知ですか?
この志毛引き染め、実は「幻の技法」とも呼ばれているんです。
何が「幻」なのかって?
その答えは、美しさと難易度の高さにあります。日本の伝統工芸の一つとして長い歴史を持ち、時代の移り変わりの中で一度は失われかけたものの、今もなお職人たちの手によって受け継がれているんです。かっこいいですよね!
そんな「幻の技法」について、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。
(ちなみに、志毛は吉兵衛の先代がつけた当て字で、本当は「絓引き」なんです)
志毛引き染めの特徴と美しさ
志毛引き染めに使われるのは、サンバーと呼ばれる水鹿の夏毛でできた特別な刷毛です。実はこの刷毛、とても貴重なんですよ!(刷毛については、次回の第2部でじっくりお話ししますね!)
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この技法で柔らかく繊細な線を引くためには、刷毛の角度や速度の微妙な調整が必要になります。染料の含ませ具合も刷毛の性質、湿度や天候によって変わるため、職人の経験と勘が試されるんです。
職人が約4メートルにわたる美しい線を一気に引ききる姿は、まさに圧巻そのもの!その揺らぎと温かみは手作業ならではの味わいで、生地に奥行きと優雅な美しさを与えてくれます。
幻の技法と呼ばれる理由
なぜ「幻の技法」と呼ばれるのか、不思議に思いませんか?
志毛引き染めは、何年もの修練を積んだ職人の手で代々受け継がれてきました。しかし、時代の流れとともに伝承が難しくなり、消えつつある技法でもあったんです。でも、私たちの職人たちは長い年月をかけてこの技法を研究し、今でもその伝統を守り続けています。幻と言われる由縁、少し伝わったでしょうか?
【ちなみに】志毛引きを引くコツってなんだかわかりますか?
さて、ここでちょっとした質問です。志毛引きで美しい線を引くコツって何だと思いますか?
手染め屋吉兵衛では、時折半衿の志毛引き体験を行っていて、お客様から「どうやったら綺麗に引けるんですか?」とよく聞かれるんですが…
その答え、実は「初めての方には、まずできません!」なんです(笑)
志毛引きの難しさは経験しないと分からないものですし、自分だけの線が引けることが、この体験の醍醐味。とはいえ、「少しでも綺麗に引きたい!」という方には、いくつかコツがありますのでご紹介しますね。
1.途中で止まらないこと
2.後ろに進むように引くこと
3.力を入れすぎないこと
4.初めは速く、やや刷毛を寝かせて引き、その後は速度を落として刷毛を少し立てる
この4点を押さえると、それっぽい仕上がりになりますよ!
もしも「すごく綺麗に引けた!」という方がいたら、ぜひ履歴書を持って吉兵衛工房まで(笑)
吉兵衛工房では志毛引き専用の特別室がある!?
志毛引き染めの集中力を高めるために、吉兵衛工房では専用の特別室が設けられています。長さ16メートルの一枚板に生地を貼り、そこで職人が心を込めて志毛引きを行っています。
ここでは職人さんが一人で入室し、作業を行います。
ですので、職人さんに重要な用事がない限りこの部屋には入室しないよう細心の注意を払っています。
第1部では、志毛引き染めがどのように美しい線を生み出し、幻の技法と呼ばれる背景についてご紹介しました。次回の第2部では、この染め技法に欠かせない貴重な刷毛について詳しくお話しします。
次回もまたみてくださいね覧くださいね!